会社経営権

会社の経営権をお持ちの方の悩み

近年、「社長」の高齢化が進み[1] 、中小企業・同族会社の社長が交代する年齢の高齢化も顕著であるといわれています[2] 。我が国の企業の9割以上は中小企業で、その多くが非上場の株式会社です。

また、非上場株式会社の株主は経営者とその家族であることが多く、経営権の承継には、ビジネス及びオーナーシップの継承と共に、ファミリーの継承も検討する必要があります。この非上場同族会社の場合、このファミリーの承継の問題が事態を複雑化します。

すなわち、後継者の他に兄弟がいる場合で、かつ、経営者の個人資産のほとんどが自社株である場合に、事業承継の問題が複雑化します。経営権の承継において最も大事なのは会社の支配権の承継です。会社の支配権の承継には株主総会決議事項が単独で可決できる66.7%以上の株式の承継を目指すべきです。

そのためには、相続発生前に事前に準備をしておくのが肝要です。

しかしながら、平成25年7月11日付けの帝国データバンクの意識調査によると、経営権の承継を進めるための「計画はない」企業が30.0%、「計画はあるが、まだ進めていない」企業が32.4%と、6割超の企業が経営権の承継への取り組みを行っていません。経営権承継の重要性については認識しているが、いまだ準備をするまでに至っていないというのが我が国の非上場会社の現状と思われます。

[1] 2015年1月29日付 帝国データバンク「全国社長分析」
社長の平均年齢は59.0歳で、1990年の54.0歳から5歳も上がった。

[2] 2013年6月26日付 帝国データバンク「事業承継を実施した中小企業の実態調査」
事業承継を実施した前経営者の年齢は、「65~70歳未満」が23.8%でトップ。60歳以上は78.0%、70歳以上だと30.8%。

経営権承継の方法

  1. 後継者に経営権を承継するに際しては、以下の点に留意する必要があります。
    ① 後継者には少なくとも、66.7%の議決権を集中させる。
    ② 後継者以外の相続人には、その他の財産を譲り渡す。
    ③ 遺留分を侵害しない。
    ④ 認知症になる前に対策を完了する。
  2. 経営権承継対策の具体例としては、主に以下の方法があります。
    ① 生前に後継者に66.7%以上の株式を譲渡し、後継者以外の相続人への相続財産を作る
    ② 種類株の活用
    ③ 民事信託の活用
  3. 経営権承継の事前準備をしないまま、オーナー社長に相続が発生した場合、多くの場合、会社は根が深く、複雑な紛争や裁判に巻き込まれてしまいます。

当事務所では、近時、非上場会社の経営権や株式の評価を巡った紛争または裁判を受任することが多くなっています。
当事務所は、現経営陣とともに事前準備を行ったり、準備が十分でない間に相続が発生した事案についても、会社側や相続人側を代理して適切に事件を解決した経験を多く有しております。非上場会社の経営権の承継について、お困りの際は、安心してご相談いただければと存じます。

実例集

  1. 経営権承継の準備を全くしていないときに突然オーナー社長が死亡したところ、相続人の一人が悪意ある第三者と共謀し、会社の乗っ取りを画策したが、これを他の相続人及び会社経営陣と協力して排除した例。
  2. オーナー社長が死亡して数日後、突然それまで会社経営に全く関与していない相続人が相続の結果、過半数の株式を取得した、ついては社長に就任するとして会社に乗り込んできた。会社の経営陣と他の株主が協力してこれを排除した例
  3. 創業者一族で42%の株式を保有していたが、会社の経営は第三者が行っており、創業者一族は経営に関与できないでいた。創業者一族は上記株式の相続税の支払いを心配し、相続税の原資とすべく、経営陣に配当の増額や自社株の買取を要求したが、経営陣はこれに対応しなかった。このような状況で、創業者一族が多数派工作をして、定時株主総会にて取締役を入れ替え、経営権を奪取した例。